良かった。
著者はすい臓がん告知から2年余りで、2度の手術、2度の再発、化学療法とその副作用を経験している。
かといって、この本はよくある闘病記ともちょっと違う。
いろんな情報、感情、事実、疑問、提言、感謝…
ごちゃまぜのようでそうではなく、実践的でとても整理されている。
著者さんの教養の高さ、性格の強さ、表現者としての矜持 に触れる一冊。*1*2*3
あとがき「生きるための言葉を探して」に、彼女が「記録された」「活字になった」言葉に力をもらうということがあった。なるほど、だからこの本にはそういうものがあふれている。
病状については淡々と語られることもあり、その辛さ、衝撃に涙を流すことはなかったが、
著者のお父様の臨終に際しての、著者の息子さんの言葉と、あとがきにあった、幼い頃の(やはり息子さんの)言葉で泣けた。
同じような経験あるなぁ。。。子供とはなんと愛らしくありがたいものかと思うし、このエピソードを盛り込んだ著者さんの気持ちも伝わって、涙が止まらなかった。
結局なにかで死ぬんだから、受容できなくても悟れなくても「ただ死ぬまで生きればいい」というのは、自分自身もずっと考えていたことと同じだ。
このあとがきから1か月もしないうちに旅立たれたそうだ。がんは容赦ない。
でも坂井さん、あなたの残した活字、すごく有難いですよ! と言いたい。合掌。
*1:家族もすい臓がんで2度手術をし、もうすぐ丸9年である。5年生存率1割に満たない方のその1割にいることは奇跡だ。まず2度目の手術はしないのだろうが、この方の主治医と同じく、今後はこういう治療も進んでいくだろうということで、自信をもって主治医がトライしてくれた結果なんだなと改めて思った(ただし著者は肝臓への転移、ウチは転移がなかったので大きく違う。それでもあまりやらないのはやらないらしい)。
*2:先日他界した従兄弟は、著者と同じくすい臓がんの手術後1年以内に肝転移し、あっという間に逝ってしまった。50代、60代前半という年齢の方が、高齢者より悪化が早いのかなとも思う。
*3:この本を読んで、手術、抗がん剤の種類など、具体的な治療について、ああそういうことだったのかと改めてよく解った。患者本人も家族もここまでなかなか調べられない、理解も出来ない。凄いなと思う。