とらとらでひとりいぐも

TigerBalm's diary   ぼぉっと生きてる第2種兼業主婦の独り言

父の仕事

こないだから何度か父の会社を手伝いに行っている。「父の会社」ってまるで社長みたいだけどそうじゃなくて、もともと私の母方のお祖父ちゃんが作って、伯父さんが2代目で、今は従兄弟が3代目、という要するに限りなく個人商店みたいな会社だ。
会社の建物は私が生まれたのとほぼ同時に建てられたビルで、ごく短期間だけどそこに住んでいたこともある。小さい頃は倉庫で台車に乗って走り回ったり、ダンボールの山でかくれんぼしたり、荷物用のエレベータの中をこわごわ覗いたりして遊んでた。特に誰もいなくなった事務所でマイクをオンにして、「ぴんぽんぱんぽーん♪」と鉄琴?みたいなチャイムを鳴らしてアナウンスの真似事をするのが大好きだった。もちろんその頃は父もめっちゃ若かった。思い出すのは、プロジェクトXに出てくるおじさん達の若い頃とそっくりの、「太いセルロイド黒ブチめがね+ぴっちり七三分け」で、会社の名前が刺繍してある上っ張りを着ていた姿だなぁ。
なんか背伸びした大人の空気が吸えるような気がしたのか、私は父の会社に行くのが結構好きだった。「こんにちは〜」と覗くと、いつも「ブーブーブーブー!」と音がしていた。伝票やらカタログやらファイルやらがうず高く積みあがったねずみ色の事務机の上には、よく連れて行かれた耳鼻科の診察台みたいに回転する電話台がいくつかにょきっと立ってて、それにのっかってる当時のビジネスホンは「トゥルルル♪」とかじゃなくて、早よ出んかい!と言わんばかりに何故か「ブーブー」鳴っていた。椅子が足りないのか、ビールケースをひっくり返して座布団をくくりつけたものが休憩所にはいっぱい置いてあった。なんかいつもうるさくてごちゃごちゃしてて、でもなんともいえない活気のようなものがあって、好きだった。
関係ないけど、私の行った中学は、毎年作るクラス名簿に、住所・電話番号に加えて、保護者名とその勤め先が載っていた。(そのために毎年「調査票」みたいなのに書かされるのだ。)医者・教師・一流企業の名前などがずらっと並ぶ中で、聞いたこともない「○○○商店」ってどうよ〜(^.^; とはよく思ったけど、無名のちいちゃな会社で働く、スーツにネクタイなんてたまにしかしなかった父の仕事は私にとって結構身近な存在だったんだなぁと思う。自分が今の仕事を選んだの理由の中には、「個人商店や中小零細企業の味方になれたらええなぁ。」という希望もあったんだと思うし。
この度「ちょっと困ってるから、遠いけど、何回かだけみにきてくれる?」と依頼されてお邪魔することになった。
昔からの従業員さんも何人かいらっしゃる。さすがに電話は普通の音で鳴るし、何でもパソコン処理するように変わってはいるんだけど、建物も、そこにあるモノ、出てくる人、なにもかもが思った以上に「同じなんだけど何かが古びている状態」で懐かしいのと面白いので途中から笑いそうになった(^.^; もちろん父もすっかりじいさんになってるし。きっと向こうも「おぉ、あのガキがこんなおばはんになってしもて・・・年とる筈や。」と思うんでしょうねぇ。
二代目だった叔父さんはご病気で、近くのご自宅までお見舞いに伺うと、やっぱり外見は思っていた以上に変わっていて、少し悲しくなった。なんかついこの間のことのように「ブーブーブーブー」の情景が浮かぶだけに、老いるということの残酷さを見せられた思いで、仕方ないと思いつつ帰り道にはもっと悲しくなった。でも、そうやってみんなが支えてきた会社のお手伝いが少しでもできるのは、すごく嬉しいことだなぁと思えるし、今はもういないおじいちゃんやおばあちゃんのことも懐かしく思い出したりするのでした。
というのも、虎男が先日宿題で「おしごとしらべ」というのを持って帰ってきたのだ。お父さんかお母さんの一日の仕事の様子を調べて、文と絵にしなさいというものだった。一応お父さんにしたんだけど、説明が難しい。一日デスクでパソコン、じゃつまんないから、無理やり外回りもさせてみるw けど、なかなか絵がかけない。 やっぱり子供達にとって「昼間のパパ」は想像できないみたいだ。(なんかしらんけどお外でええもん食べてるんちゃうか、とは思っているらしいw)うちのだんなも、自営業だった父親にしょっちゅうくっついてあちこち行ってたそうで、それが楽しかったと子供時分の記憶に残っているらしい。そういう体験をうちの子供達にもさせてやりたいけど、ふつーのサラリーマンだと難しいなぁ。