とらとらでひとりいぐも

TigerBalm's diary   ぼぉっと生きてる第2種兼業主婦の独り言

#23リアリティありました

沈黙の町で

沈黙の町で

 自殺なのか?事故なのか?いじめとの因果関係があるのか?…先日の「ソロモンの偽証」と(ストーリーは全く似てませんが)とっつきが同じ。どちらも今をときめく流行作家、彼らをしてこのテーマを書かずにはいられない今、ってわかる気がします。大人として、表現者として、何か声をあげなければならないという思いがあるんじゃないでしょうか。
 
 どちらも中学生、13歳14歳が主人公。そして今まさにわが子がその年代の自分としては、一気読みです。

 読み進んでいて非常にリアルだなと思いました。子供・親・学校・警察、それぞれをこんな簡単そうに、見てきたように、鮮やかに描き分けられるもんでしょうか。奥田さん群像劇上手すぎ。あまりの日常っぽさ、リアルさにぐいぐい引き込まれます。

 作者は決していじめられる側が悪い、と描いているのではないと思います。そういう見方でこの作品を捉えてほしくないです。コミュニケーション障害について意識して書いているのかなとは感じましたが。

 うまく言えないけど、当事者、関係者、傍観者がいかにそれぞれ”閉じて”て、自分の考え方に固まってり、自分可愛さに自分を追い込んでしまうか、どれだけ幼いか、どうやったらそこから進歩できるのか、と問われている気がしました。そのための突き放したラストなのかなと。

 宮部さんの「ソロモン」は「こんな中学生おらんわー!」と思いながら、希望をくれる一冊。こちらは、あくまで等身大、現実感。読み終わってもまったく気分良くはなれません、が、間違いなくお勧めの一冊。