とらとらでひとりいぐも

TigerBalm's diary   ぼぉっと生きてる第2種兼業主婦の独り言

大地の咆哮 元上海総領事が見た中国

大地の咆哮 元上海総領事が見た中国

(出版社/著者からの内容紹介より)
2004年5月、在上海日本総領事館の館員が、中国側公安当局者による恫喝と脅迫に苦しめられ、自殺の道を選んだ事件は、日本人に大きな衝撃を与えた。そのときの総領事が著者である。
同年秋、一時帰国した著者は、自らの体に病巣があることを知る。医師から告げられた最終診断は末期がんであった。抗がん剤による激しい副作用と闘いながら、日本と中国の未来を見据えて書いたのが本書である。

(内容より)
中国は日本にとって時としてやっかいな隣国であるが、だからといって引っ越すわけにもいかない。

中国を見続けてきた作者が、なるべく平易に、今後の日本のとるべき道について語りかけています。
この国の脅威としては、外向きなものが多く報道されるけれども、内部かてかなりおっそろしいのではないかと思っていたので、やっぱりそうだよなぁと思いながら読みました。またきもちわるい泡だらけの河とか濁った空とか環境破壊しているよ〜という映像を以前見て恐怖を感じたので、ODAの幕引きに関する彼の提案は是非実現してもらいたいと思いました。
大きなことから小さなことまで、日本の外交官として中国・台湾でかけずりまわって来られて、死期が迫ってもなお日本の将来を訴えたかった著者。いろいろと書きにくいこと、書けないこともあったんだろうけれど、迫力が伝わってくる本でした。
最後の「Q&A」みたいなのもわかりやすかった。主張すべきことは主張し、相手のプライドも立ててやり、国益をとるということを皆が考えなあかんのだろうと思う。”愛国心を育てる”教育がそういう方向だといいけどねぇ。



さよなら、サイレント・ネイビー ――地下鉄に乗った同級生

さよなら、サイレント・ネイビー ――地下鉄に乗った同級生

なんだか見た目”さわやか小説”っぽい装丁なんだけど、オウム事件の被告豊田と東大で同級生だった作者が書いたノンフィクション。
作曲家っぽい文章というのか、彼が自分自身の考えを深める様子と、”相棒”とされるちょっとイケてない女子大生との会話との繰り返しで話が進むのが、まぁわかりやすいといえばわかりやすいし、まどろっこしいといえばまどろっこしい。
ただ、友達だった彼を今作者がどういう気持で見送ろうとしているのか、それを思うと最後のあたりは泣けてきました(そういう読み物じゃないんだろうけど)。
オウムは自分とは関係ない、ありえない事件じゃないんだよ、ということと、東大と、死刑制度と、海軍と・・・となんかいろいろ出てきます。
犯罪があったときに、その再発防止を一番に考えるべきだという主張には強く賛同するけれど、松本被告に死刑というのはやっぱり被害者のことを考えれば当然じゃないかと思うし、どんなに裁判を続けても意味のある発言って期待できなかったんじゃないかと思う。
身体現象を宗教性に絡めてつけこまれた、巧妙な洗脳プログラムがあった、というのは他のところでもよく言われていることだ。あまりに残虐なものを見聞きすると、脳が窒息して考えられない状態を作るというのはなんとなくわかるような気がした。読んでいて、「けもののからだ、にんげんのこころ」というのを思い出した。人間自身がけもののからだを持っていることを忘れて、「にんげんのからだ、けもののこころ」になると犯罪者になっちゃうんだよ、っていう話だった。
友人としての約束を守るために豊田の発言がほとんど記録されていない分物足りなさがある。彼の沈黙から何かを伝えたい、残したいんだと思う作者の気持ちが前面に出ている本だった。